研究課題
基盤研究(C)
本年度中の研究成果は主に2つの項目が挙げられる1.回転一様せん断乱流一定角速度で回転する系における一様せん断乱流中の渦のダイナミックスを数値実験を基にして研究した。以前の研究成果から、回転一様せん断乱流中で発生する秩序渦は、発生時は一様せん断流の渦度と同じ方向の渦度を持っていることが示された。本研究では、時間発展に伴う秩序渦のダイナミックスを研究した。秩序渦は時間の経過と共に引き伸ばされ、向きを変え、最後に粘性散逸によって消滅する。問題となるのはその過程で向きを変えることである。その原動力は3通りの理由が想定される。一つはヘアピン渦の端部の反対方向を向いた渦管同士の相互作用である。互いの誘導速度によって渦管はその向きを変え、次第に一様回転に伴う渦度の方向へと変化していく。次に、交互に並んだ同じ方向の渦度を持つ渦管同士の相互作用である。同じく互いの誘導速度によって一様回転方向へと向きを変える。最後に単独の秩序渦であってもその端部の渦度場の構造によって事故誘導が発生し、やはり一様回転方向へと転換させられる。このようにして渦管の全ての相互作用は渦管を一様回転方向へと導くことが示された。さらに、時間の経過と共に渦管はその断面を円形から楕円形へと変形させる。そのため、強い粘性散逸を受けることなり、秩序渦管で構成される乱流場は減衰効果を受ける。このようにして回転一様せん断乱流では一様せん断からの注入されたエネルギーを渦管の変形によって散逸させるという自己調節機能が働いていることが示された。さらに、楕円形断面の渦管はKida Vortexの実例として大変興味深く、本研究対象が流体力学の基礎的な問題に対する解答を与えることができる点が非常に重要と考えられる。2.閉領域内の回転流閉領域において回転する円盤があって、それに一様下降流が存在する系は、半導体洗浄装置などで実際に用いられていることを含め、流体力学的にも基本的に重要な流れであって、本課題では一様回転が流れに及ぼす影響の詳細な研究を行った。解析には市販の流体数値解析ソフトを2種類(FLUENT、Star-CD)用いて、さらに実験とに比較も行った。回転の影響でまず注目すべき点は、円盤の形状が軸対称な形でなくても回転させることによって、流れ場は軸対称に非常によく接近するという点である。実際円盤には3個の穴が120度間隔で開いていて、もし円盤が回転しなければ流れは複雑な振る舞いを示す。ところが円盤を回転させると、流れ場は特に円盤から離れた位置では急激に軸対称に近づくことが示された。これはコリオリ力と遠心力の共同作業が原因と考えられ一様回転が流れ場を平滑化することは実用的な装置の設計にも大変重要な示唆を与えるものであると考えられる。さらに一様回転は渦度場にも大きな影響を与える。円盤が回転しないとき、円盤の上下に大変複雑な渦構造が発生し、それによる気流で流体中の微小液滴は様々な方向に飛散し、装置に悪い影響を与えることがわかっていた。ところが回転を加えると特に遠心力の影響によって渦構造が大変単純となり、微小液滴の不適切な飛散が抑制されることが示された。この結果は実験的にもある程度支持されていて、満足すべきものである。今後はこれらの結果を基にしてさらに円盤に付着する液膜の力学、流体中の微小液滴のドリフトの状況、さらに円盤を偏芯回転させた場合の流れ場を調べる予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Fluid Dynamics Research Vol.37
ページ: 237-254
同志社大学理工工学研究報告 第48巻1号
ページ: 31-41
日本機械学会論文集(B編) 73巻728号
ページ: 909-915
Fluid Dynamics Research Vol. 37
The Science and Engineering Review of Doshisha University Vol. 48, No. 1
Transactions of JSME, Series B Vol. 73, No. 728
http://et2001.mech.okayama-u.ac.jp/yanase/indexjp.html