出力50mW、波長639nmの可視半導体レーザからの射出光を、焦点の直径dが約2μm、長さが約50μmであり、焦点の間隔Sが36μmである2つの焦点に集光し、液滴が2つの焦点を飛行する時間t_1により速度u(=S/t_1)を求め、焦点における液滴の散乱時間t_2により粒径dp(=u・t_2-d)を求めた。 (1)噴孔径Dが0.2mmの単噴孔ノズルから大気中に間欠噴射されるディーゼル燃料噴霧において、噴孔からの距離zが0.2、0.5、および1.5mmで、噴射開始後、針弁および噴射圧の上昇とともに液滴の速度および粒径が増加し、また噴孔から下流に向かって液滴の速度および粒径が減少することが確認された。一方、噴射圧が高く針弁全開の時期にはz=0.2mmの速度および粒径が下流側より小さく観察され、液柱あるいは液滴数密度のきわめて高い領域が存在するものと判断された。 (2)z=20〜40mmで、針弁上昇初期に噴射された低速の液滴が後に噴射された高速の液滴に追い越される現象が捉えられ、またこの位置では追い越しに起因する液滴の衝突・合体は顕著でないことが明らかになった。さらに、z=10mmにおいて液滴速度を代表速度とするウエーバー数が120より大きい液滴はz=40mmに到達せず、液滴の分裂時間が短いものと判断された。また、液滴の粒径分布は噴孔近傍ならびに噴霧軸中心部においても抜山棚沢分布に近いことが明らかになった。 (3)往復動エンジンのガス流動および噴霧液滴の分裂・合体・蒸発・燃料を解析するFortranソースコード:KIVA-3に、F.X.Tannerの拡張テーラーの液滴分裂(ETAB)モデルを組み込み、噴孔半径をザウタ平均粒径とするカイ2乗分布を噴孔出口部の粒径分布とし、また分裂後の液滴半径を適切に見積もることにより、良好に計測結果をシミュレートできることを明らかにした。
|