本研究では、実用上有意義である高レイノルズ数領域において、過冷却液体窒素管内二相流れの流動不安定性に関する実験的検討を行い、その影響因子を同定し、数値解析モデルの構築及び検証に必須となるデータの取得を目指している。 本年度は、現有流動試験装置を用いて、液体窒素の供給温度を主パラメータとした可視化流動試験を行い、絞り部上流・下流の静圧および流体温度とキャビテーションの発生状況との相関性を調べた。その結果、過冷却状態として設定した流体温度T=68Kのキャビテーション流動では、標準状態沸点であるT=77Kの場合に比較して以下の2点が大きな相違点であることが確認された。 (1)キャビテーション流動はより非定常な挙動を示し、絞り部上流静圧を上昇させてもキャビテーションが絞り部で定常的に連続して発生することはない。 (2)キャビテーションが発生すると、絞り部上流側に大きな圧力振動を伴い、配管系全体に大きな振動が生じる。 この原因として、T=68Kの過冷却液体窒素では音速が温度及びボイド率によって単相状態の値に比較して急激に降下し、絞り部でチョーク流れが生じるため、キャビテーションの安定的な発生には至らないものと推定される。 しかしながら、現有装置では絞り部の流速を高精度に測定することが出来ない。上記推論を定量的に評価するため、絞り部の形状を改修するという当初の計画を変更し、絞り部への供給流量を高精度に測定可能な低温流量測定系の整備を進めた。
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