研究概要 |
昆虫のような羽ばたき運動による飛行では,ホバリングや急旋回が可能であり,災害時の被災者探査など,固定翼機やヘリコプターでは実現することが難しい非常に小さな空間における利用などが期待されている.羽ばたき型マイクロ飛行機を開発するため,今年度は,羽ばたき機構の作成,羽ばたき翼周りの流れの計測,昆虫の翼周りの流れの可視化を行った. 羽ばたき飛行を行う際に重要となる翼のひねり運動について検討を行った.まず,高速ビデオカメラを用いて昆虫の羽ばたき運動を可視化し,羽ばたき運動の特徴とそのときの流れの様子について調べた.測定結果を元に昆虫の運動を模擬した羽ばたき機構を作成した.開発にあたり軽量化を最重要課題の一つと考え,できるだけ少数の部品で羽ばたき機構を製作する方法について検討した.具体的にはひねり機構と羽ばたき機構を一つのモータで実現することを目標とした.最終的にはリンク機構と歯車を組み合わせ,小型軽量の羽ばたき機構を作成した.羽ばたき角度が1度変化することに,翼が約2.5度ずつひねられる機構とした. このモデルの周囲の流れを可視化するために,小型の回流風洞を作成した.流れの可視化にはIDT社製のPIVを用いて行い,渦の挙動と羽ばたき運動の関係について実験的に調べた.また,発生した流体力を評価するため,離散渦法を用いた数値解析を行った. 羽ばたき翼機構を製作し,PIV計測及び数値解析を行った結果,以下の知見が得られた. (1)昆虫の羽ばたき翼周りの流れの可視化を行い,羽ばたき時の翼のひねり角度,速度を求めた. (2)羽ばたき飛行では,翼の前縁部にできる渦とその渦を羽面上に保持するひねり運動が重要であることがわかった. (3)ひねり運動による流体力の改善効果を定量的に評価し,さらに揚力を改善するための羽ばたき運動を提案した.
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