研究概要 |
申請者は,平成15年度までの研究により,正方形断面90°ベンドに発生する波状サンドエロージョンの定性的な再現に成功している.この研究結果によれば,主流方向に波状サンドエロージョンが発生することによって主流方向速度分布が大きく変化し,流れ場と壁面形状の変化が相互干渉していることが認められた.この研究は,約3年にわたる3次元サンドエロージョン数値予測プログラムの研究開発の成果であり,平成15年度末までにガスタービンの3次元タービン翼に生じるサンドエロージョン現象に対する検証を実施して,プログラムの検証・開発を終了した. 平成16年度は,このプログラムを利用して,正方形断面90°ベンドにおける波状サンドエロージョンの発生メカニズムの数値的解明を行う.このケースは,スパン方向のみに波状サンドエロージョンが発生する典型例である.計算の実行は分担者の戸田和之が,結果のチェックと研究方針の調整は代表者の山本誠が担当した.計算条件としては,1ケースの計算に約1ケ月かかることを考慮し,粒子直径、壁面曲率半径をそれぞれ3通りに変化させた計9ケースを取り上げることとした.また,本プログラムでは粒子および壁面の材質に任意のものを採用できるが,エロージョン速度が比較的速く,典型的な延性材料のエロージョンを示す組み合わせとして,シリコンカーバイド粒子とアルミニウム壁面を用いた.計算結果は逐次可視化処理し,現象の把握・理解を行い,正方形断面90°ベンドにおいて波状サンドエロージョン・パターンが生み出されるメカニズムを明らかにした.すなわち,粒子の壁面衝突により壁面に溝が生じると溝の下流方向にエロージョンが進行すること,エロージョン溝による縦渦の作用により溝の幅方向にもエロージョンが誘起されること,幅方向のエロージョン量が下流方向に比べてわずかであること,これらの現象が進行することによって壁面に波状のエロージョン・パターンが形成されることなどが示された. 今年度の研究成果の一部は,平成16年7月にユバスキュラ(フィンランド)で開催された国際会議ECCOMAS2004,9月に北京(中国)で開催されたWCCM6など国内外の学会において発表した.
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