初年度は低温度排熱利用のための吸収式ヒートポンプの基礎となるフィン壁面の吸収性能について実験を主に研究を行った。実験装置は吸収器と溶液濃縮器で構成され、吸収器では背面を水冷した微細フィン付き銅壁面に沿って吸収液を流下させ水蒸気吸収を行う。その結果薄まった吸収液は溶液濃縮器において棒状電気ヒータ外面に沿って流下させ、加熱により濃縮するとともに、その際発生する水蒸気を吸収器に供給する。なお電気ヒータ外面は液膜の乾きが生じないよう、ステンレスメッシュをコイルスプリングで密着させた。液膜の流動状態を観察できるよう、吸収器、濃縮器とも透明容器とした。また溶液濃縮器と吸収器の間に溶液熱交換器を設け、吸収壁面に供給する液の温度を任意に設定した。水蒸気吸収速度の測定は吸収後の溶液をサンプリングして密度を測定することにより行った。以上の装置を用い、吸収液を臭化リチウム58wt%水溶液とし、系圧力約5Torrのもとで種々の溶液流量および溶液入口温度について水蒸気吸収速度を測定し、壁温の実測値に基づき吸収の物質伝達率で実験結果を整理した。その結果、液膜レイノルズ数が約15以上になると平滑壁面の場合に比べて吸収速度が増加し、物質伝達率は液膜レイノルズ数が約50の時に最大となった。この時の平滑液膜に対する吸収促進率は入口溶液温度が過冷却の場合には約4倍、飽和の場合には約3倍となった。このことからフィンによる流れの攪拌効果が吸収促進の主因であることが分かった。
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