本研究は、高温液と低沸点液の直接接触に伴う蒸気爆発現象において爆発的蒸気発生のトリガとなりうる液体の過熱限界における自発核生成現象に着目し、高温石英ガラス面に低沸点液体を高速で衝突させた際の自発核生成とそれに伴う急速蒸発過程を、接触面温度の高精度測定とミクロな様相観察を同時に行いつつ明らかにすることを目的として行った。 実験では、石英ガラス面上の微小白金薄膜ヒータを試料液エタノール中で瞬時に高発熱させて自発核生成を起こさせ、急速成長する一個の合体気泡がキャビテーション崩壊する際に薄膜伝熱面に高速で衝突する現象を利用して、固液衝突後の核生成の様相を詳細に観察した。 平成16年度は接触時の固体表面温度を調節するために接触時においてもヒータを適度に発熱させ続ける方法で行い、平成17年度は接触の直前に加熱を停止し発熱源の影響を排除した方法で実験を行った。また表面温度の時間変化から流体に伝達された熱流束を算出し、急速熱移動と自発核生成の関係も調べた。両年度における結果をまとめると以下の通りとなる。 1.合体泡消滅時の伝熱面温度が均質核生成温度付近となる場合に、自発核生成によるとみられる微細気泡が一斉に発生する。 2.合体泡消滅時の伝熱面温度が均質核生成温度より低くなるにつれて微細気泡の発生数は僅かになる。反対に合体泡消滅時の温度が均質核生成温度より高くなると、消滅後も蒸気膜で覆われる部分が増え、伝熱面温度が均質核生成温度より約70〜100度以上高い場合、合体泡消滅後も崩壊しない蒸気膜に伝熱面は覆われ続けるようになる。 3.合体泡消滅時の固体面の冷却速度(表面温度降下速度)と表面熱流束は、消滅時の伝熱面温度が均質核生成温度より50度程度高いとき最大となる。蒸気膜が覆っているように観察される高温域でも伝熱面温度を顕著に降下させるほどの固液接触と固体面上での蒸発が生じている可能性がある。
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