研究概要 |
本研究では,平面予混合せん断流中に形成される組織構造における火炎と渦の相互干渉過程の詳細を,2方向同時高速度撮影による画像解析と離散渦法を用いた数値解析により検討した.実験では,一個の組織渦の中心および隣接する2個の組織渦の中間という両極端の位置での火花点火後の伝播過程を高速度観察した.数値解析では,隣接渦の中間点で火花点火した場合の火炎と渦の相互干渉過程を,離散渦法にホイヘンスの原理による火炎面移動を重ね合わせて定性的に予測した.これらの実験的および数値的解析結果を比較検討することにより,以下の結果が得られた. (1)渦中心点火後の火炎は一様流中における伝播速度より大きな速度で伝播することがわかり,渦運動による火炎伝播促進機構(Vortex bursting)の発現を明らかにした.一方,隣接渦中間点での火花点火後の伝播火炎も,渦中心点火火炎とほぼ同じ速度で伝播することが明らかとなった.これにより,平面せん断流中には他の種類の火炎伝播促進機構が存在すること,その推進力がせん断流の巻き上げ運動(Rolling-up motion)であることを示し,本研究ではこれをVortex boostingと名付けた. (2)離散渦法によって数値解析された隣接渦中間点での火花点火後の伝播火炎の挙動は,火炎の曲率などの三次元性を無視しているにも拘らず,光学観察結果とよく一致した.これにより,離散渦法による火炎と渦の相互干渉過程の解析的アプローチが有用であることが示された. (3)平面せん断流中における火炎伝播を促進する要因が火炎と渦の相互干渉に起因する物理的要因と層流燃焼速度を介して発現する化学的要因から成ること,物理的要因は組織渦の渦運動に由来するVortex burstingと巻き上げ運動に由来するVortex boostingから成ること,および火炎伝播速度V_f(m/s)に及ぼすこれらの影響が渦周速度ν_θ(m/s)と層流燃焼速度S_L(m/s)を用いて定性的に V_f=ν_θ+(ρ_u/ρ_b)S_L で表されることを示した.
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