加熱固体面に連続入射する2液滴の衝突挙動と熱移動現象を数値解析によって明らかにした。まず固体面温度が液体の沸騰点よりわずかに低い場合について、液滴径、衝突速度、液滴間距離の諸因子が熱伝達特性に及ぼす影響を研究した。その結果、いずれも熱伝達特性を左右する重要な因子であることが明らかになった。衝突時の慣性が大きく、かつ液滴間隔が小さいときに熱移動量は大きくなる。なお、計算モデルの妥当性を検証するため衝突挙動の観察実験を行い、計算によって得られた液滴形状の時間変化を実験と比較したところ良好な一致が得られた。 次に、固体面温度が液体の沸点よりも高い場合について研究を行った。液滴直径が約0.6mm、衝突速度約2m/sで観察実験を行ったところ、固体面温度が300℃では液滴が固体面に衝突すると、瞬時に固液界面で沸騰が起こり、蒸気気泡の発生が観察された。しかし、固体面温度を500℃に設定すると、気泡発生が観察されなくなった。これは、固液界面で薄い蒸気膜が形成されるためと考えられる。後者の場合については、蒸気膜形成を考慮に入れた数値解析モデルを開発し、数値計算によって衝突挙動と熱移動現象を研究した。その結果、固体から液体に移動する熱量の多くは液体から蒸気に相変化することによる気化熱に費やされることが示唆された。また、計算による液滴形状の時間変化は、観察実験結果と良好に対応し、計算コードの妥当性も確認できた。
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