研究概要 |
アンモニアは水素との間で相互変換が可能であり,常温で加圧すれば直ちに液体になるので,アンモニアを水素キャリヤーとして用いる方法がある。アンモニアは,理想的に分解すれば水素と窒素のみが生成され,燃料電池からの排気は水と窒素なので,環境負荷が小さい。また,高圧水素タンクに比べて燃料タンクの小型化が可能であり,液化圧力がアンモニアに近いLPGの技術や既存のインフラを応用できるなどの利点もある。そこで,本研究ではアンモニア改質の基本特性を明らかにし,ポータブル型燃料電池用アンモニア改質システムの可能性を探る。 アンモニアの理想的な分解反応式はNH_3→1.5H_2+0.5N_2である。改質温度,空間速度を変化させて,ニッケル/アルミナ触媒により改質を行う。一般的にプラントにおけるアンモニア分解は,酸化鉄系あるいはニッケル系触媒の下で,700℃,2MPaの条件で行われている。小型のシステムでは高圧下での分解反応は困難であるので,大気圧下で,改質器温度は600℃〜900℃の範囲で行う。 0.846MPaの液体アンモニアを気化器において気化させ,昇温器でさらに温度を上げ,改質器においてニッケル・アルミナ触媒を用いて800℃の温度のもとで熱分解を行う。水素,窒素,残留アンモニアからなる改質ガスは昇温器,気化器においてそれぞれ熱交換をし,アンモニア除去器において残留アンモニアを除去し,水素と窒素の混合ガスを燃料電池に供給する。 以下の知見が得られた。アンモニア蒸留器分解器内での触媒温度800℃,空間速度600[1/h],圧力は100kPaでの分解が最も有効となりこのときの残留アンモニア濃度は約250〜300ppmとなった。最適条件での分解後の残留アンモニア濃度300ppmは,アンモニア除去器(40℃以下の除去水)を使用することにより残留アンモニア0ppm(完全除去)まで低減することがでた。また,アンモニア除去器で回収したアンモニアを蒸留器にてアンモニアガスと低濃度アンモニア水に分離することが可能となった。
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