研究概要 |
蒸気は,比較的大きな冷却伝熱面上に凝縮すると伝熱面性状(親水性,撥水性)により膜状あるいは滴状となるが,伝熱面寸法を極めて小さくしていくと表面張力が顕在化し球状の液滴になりやすくなる。この凝縮液の体積に対する表面積の割合は,膜状の液より滴状の液の方が大きく,さらに滴径が小さいほど表面積割合は大きくなる。このことは,表面積が大きいほどガス吸収量が多くなる溶液へのガス吸収法にとって好都合といえる。本研究は,以上の観点から,非常に微細な円管を冷却面とすることにより凝縮形態の特異性を引出し,さらに膜滴混在凝縮の伝熱促進において効果的な管群イナンデーションをシステムとして組み入れた汚染物質除去システムを提案し,その促進メカニズムを系統的に解明するものである。本年度は,まず,凝縮伝熱特性に及ぼす微細径化の特異性と汚染ガス除去について現状を調べ,微細径円管群への凝縮を利用した汚染物質除去の対象として,汗のにおいにアンモニアや脂質が分解した脂肪酸などが含まれることからプロピオン酸とトリメチルアミン(酸性・アルカリ性ガス)を選定した。また,パラメータサーベイに基づき実験装置を試作し水蒸気の凝縮様相の観察を行った。伝熱面には,ガラス,銅,ステンレスなど外径15〜0.31mmの微細径円管を用い,二酸化チタンをスパッタリングするなど様々な表面処理を施した。その結果,微細径化に伴い凝縮形態は膜状から数珠状に遷移していき,Nusseltの膜状凝縮理論の適用に限界があることを確認した。親水性の微細径円管における凝縮形態としてPlateau-Rayleigh不安定性問題で知られるこぶ状の凹凸が管軸に沿って規則正しく連なる数珠状形態を予想していたが,円管の姿勢(水平・鉛直)により必ずしもそのような軸対象形とは限らず管外周に数珠状液がらせん状に並ぶ複雑な形態を呈することもあるほか,離脱時の直径も異なるなど新たな知見を得た。
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