開発時、プリンタ等の定着部で紙しわが発生することが経験的によく知られている。本研究は、定着部における紙しわ発生のメカニズムを解明することを目的として、本年度は(A)紙-ゴムローラ間の摩擦力測定実験および(B)用紙の一部を水で濡らし不整を与えた紙をヒータを除いた定着ローラユニットに通紙してしわ発生実験を行った。得られた結果を以下に要約する。 (A)摩擦力測定実験他 (1)紙・ゴムローラ間の動摩擦力は、すべり速度の増加と共にゼロから急激に立ち上がり一定の値へ漸近する。その立ち上がりは、ゴム硬度、ローラ周速、ローラ押付け力が大きい程、急になる。 (2)(1)で得た摩擦特性を用いてゴムローラによる紙搬送のFEMシミュレーションを行ったところ、実験とほぼ同じ紙速度が得られた。 (3)ゴムローラ外周の線素は押付け部(ニップ)で伸び歪を生じ、そのローラ表面速度(紙搬送速度)はローラ周速より速くなる。様々な条件下における伸び歪をFEM計算し、この歪が押付け力をヤング率とローラ半径の積で除した値の平方根に比例することを示した。 (B)紙しわ発生実験 (1)紙厚さが小さい程、押付け力が大きい程、紙しわは発生しやすい。紙厚さが小さい場合、しわの幅は狭く、しわ断面の曲率半径も小さい。 (2)紙しわの凸部は紙がゴムローラに接触する面に生じる。
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