本年度はまず、電気的バースト応答を用いて、振動子の大振幅応答の測定するための実験装置の試作を行い、従来報告されている縦振動するボルト締めランジュバン型振動子の非線形振動特性の確認実験を行った。さらに複合振動子型超音波モータに使用されているねじり振動子(直径30mm)や代表研究者が試作している4本の縦振動子と円環からなる進行波型超音波モータ(円環直径140mm、振動子直径30mm)、2つの直交するたわみ振動を励振できる複合たわみ振動子を駆動源として用いた進行波型超音波モータ(円環直径130mm、振動子直径30mm)のステータ部の大振幅特性を測定し、いずれの場合にも大振幅動作時に内部機械損失抵抗が、ある振動速度を境に急激に増加し共振周波数が低下する非線形挙動を示すことが確認された。この事から振動子の振動速度は駆動電圧に比例して増加することはなく、これが超音波モータの限界特性に影響している可能性があることが明らかになるとともに、このことを理論的に裏付ける動作モデルを構築するための非線形パラメータの導出がおこなえた。 またこれらの実験と平行して、モータのロータに接着されている摩擦材のモデルを、従来の単純なばねモデルから、粘性を考慮したモデルに拡張してモータ特性を計算する基礎的な検討を行った結果、摩擦材の粘性を考慮すると回転速度、出力トルクの計算結果には影響せず、効率のみを低く見積もる可能性があることが分かった。
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