研究概要 |
柔らかい部材で構成される宇宙構造物やロボット・マニピュレータなどに代表される,いわゆるマルチボディシステムは,多数の剛体や弾性体が拘束を受けて結合された極めて複雑な拘束力学系であり,その数理モデルは,複雑化した陰形式の非線形微分代数方程式(DAE)となることが知られている.このような陰形式のDAEモデルで表現されるマルトボディシステムは,ラグランジュ形式,あるいは,ハミルトン形式による従来の解析力学の方法を用いる場合,系が内在的に有する構造の幾何学的性質に注目して定式化を行う必要がある. 本件では,特に,シンプレクティック構造とポアゾン構造の両者の性質を包含する,ディラック構造の概念に基づいて,ラグランジュ力学を一般化した,陰的ラグランジュ系の理論基づく定式化を行い,さらにネットワーク化して階層的にモデリングを行う.その上で,安定かつ高速な数値解析をする統一的手法の開発を目的とする. 平成17年度は,マルチボディシステムに現れる複雑な接続構造をディラック構造によって表すための基礎となる理論を確立した.さらに,それをもとにLC回路系などに現れる退化したラグランジアンを有する系の取り扱いについて,従来のディラックの拘束理論との関係を明らかにした.また,ディラック構造の特別な場合として,非ホロノミック拘束から誘導される概ポアゾン構造をエーレスマン接続から導き,これをもとに非ホロノミック系に関する陰的ラグランジュ系の定式化方法を示した.さらに,ディラック構造に関わる変分構造として,ハミルトン・ポントリヤーギン原理によって,陰的なオイラー・ラグランジュ方程式が導かれることを示し,非ホロノミック拘束が存在する場合,および外力の作用する場合について,これを拡張したラグランジュ・タランベール・ポントリヤーギン原理をもとに,陰的ラグランジュ系の定式化を示した.
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