研究概要 |
本研究は,ディラック構造とそれに付随する陰的なラグランジュ系の力学理論の構築とマルチボディダイナミクスの統一的な解析方法の開発を目的として遂行してきた.まず,配位空間上のデイストリビューションから余接バンドル上に誘導されたディラック構造を定義し,それとラグランジアンのディラック微分,および余接バンドル上の部分ベクトル場によって陰的なラグランジュ系の理論的な枠組みを構築した.特に,ハミルトン・ポントリヤーギン原理から陰的なオイラーラグランジュ方程式が自然に導かれることを明らかにした.また,ラグランジュ・ダランベール・ポントリヤーギン原理を適用することによって,非ホロノミック拘束を受ける力学系へ拡張した.その上で,この理論を基に,具体例として,マルチボディシステムの基礎となる回路系と非ホロノミラク系に適用し,合理的な定式化に成功した.さらに,剛体の力学の基礎を与える,配位空間がリー群で与えられる場合について考察し,ディラック構造の簡約化とそれに伴う陰的なオイラー・ラグランジュ方程式の簡約化の方法を示した,すなわち,簡約化されたリー・ディラック構造と陰的なオイラー・ボアンカレ方程式を導き,これにより,非ホロノミック拘束がある場合についてのオイラー・ボアンカレ・ディラック簡約とそれから導かれるオイラー・ボアンカレ・サスロフ方程式の枠組みを完成させた.また,数値解析の点では,幾何学的な安定化法を開発し,従来のBaumgarteの方法やGear-Gupta-Leimkuhlerの方法と比較して,拘束安定性の面でより優れた方法を提案することができた. 以上のように,マルチボディダイナミクスのモデル化から数値解析までを目的とした,統一的な理論の開発に成功し,当該研究期間に,国際的なジャーナルや学会で34件の成果発表を行った.現在もなお,洗練化を目指して,実施中であり,今後の成果を期待されたい.
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