研究概要 |
本年度は主に,既存のマイクロマニピュレータシステムの機構面からの機能性向上と,遠隔操作システムの特性を把握するための基礎的な遠隔操作実験を行った. 前者では,従来の微細作業システムの駆動系は,その多くが弾性ヒンジとピエゾ素子を組み合せることによる微小並進移動機構を用いていることを鑑み,回転機構部にオフセットヒンジ型平面リンク機構を適用することにより,剛性および位置精度を維持したまま姿勢方位を任意に変えられる機能を付加することを目的とする.本年度は機構シミュレーションを行い,その知見に基づくプロトタイプの設計・製作,および基礎的な性能の評価を行った.製作したリンク機構のプロトタイプは高さ124mm,幅157mm(モータを含む)であり目標とするサイズの3倍程度の大きさになっている.リンクの可動範囲は30〜135°である.現時点においては,その全体寸法等の制約から電子顕微鏡下で稼動できる状態には至っていないが,将来的には寸法を半分以下にすると同時に,更なる解析を行うことで精度を向上させ,小型化・高精度化を図りながら高倍率光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡下で稼動可能なシステムへと発展できる見通しを得た. 後者の遠隔操作実験においては,時間遅延の計測実験,および実際に遠隔地からマイクロマニピュレータシステムの遠隔制御実験(茨城県〜東海大学(神奈川)間およびタイ〜東海大学間)を実施した.遠隔制御実験では,非接触状態のプローブに試料ステージを接近させ,互いに接触したときのプローブに加えられた接触力,およびその力をインターネットを介して遠隔地に設置されたPHANToMにフィードバックしたときにオペレータの手元に感じる力を測定した.その結果,現行のシステムではTCPプロトコルの採用により,ある程度以上の回線環境であればその操作性は確保されるが,タイとの実験のように通信時間の遅延が大きい場合には,UDPプロトコルのような代替方式の利用も含めシステムの改良を要することが明らかになった.
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