磁気ディスク装置(HDD)においては、ディスクの高速回転化に伴って回転流れが増加しヘッドの加振力となっている。これはヘッドの位置決め誤差を増加させるため加振力の低減が必要とされている。そのためHDD内部のヘッド近傍における流れ現象を把握し、ヘッドの加振力を小さくするための流路形状設計のデータを得ることを目的として以下の実験を行った。 1.ディスク回転によって生ずる流れベクトルの測定実験(実験内容、実験条件) (1)ディスク回転によって発生するHDD内部の回転流れについて、流速ベクトルをレーザードップラ流速計を用いて測定した。 (2)測定位置は、高さ方向(Z)においては2枚の回転ディスク間隔の中央、ディスク面と平行な方向(X-Y平面)においてはヘッドアーム近傍の上流部および下流部、バイパス流路への入り口近傍、バイパス流路からの出口近傍(ロードアンロード機構の近傍)などとした。 (3)実験パラメータを、ディスク回転速度(7200rpm、10000rpm)、ヘッドの位置(ディスク内周側、外周側、またはアンロード状態)、スポイラ(整流板)の有/無とした。 2.流れベクトル測定の結果について (1)ディスク間中央即ちヘッドアーム位置では、流速は回転数の約1.7乗に比例(2乗より小さい)。 (2)ディスク間にアームがあると外周では流速が遅くなり、内周では速くなる。半径方向の流れで見れば、せき止めにより外周から内周への流れが発生している。また周方向の流れ分布でみると、アーム近傍では流れが遅くなる反面、その上流または下流では速くなっている。 (3)整流板を挿入すると内周では流れが速くなり、外周では遅くなり、半径方向の流速が同じになるような作用をしている。 3.今後の予定 今回測定した流れ場のデータをもとに、ディスク回転による流れが、ヘッドアームを加振するメカニズムを検討する。
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