研究概要 |
本研究の究極の目的は動的筋活動時における筋音図の導出・分析技術を確立することにある。動的筋活動とは筋長の変化を伴う筋収縮を意味する。動的筋活動は普段行う運動に付随し,さらに障害者や高齢者の筋力トレーニングにも利用されるようになってきた。ここで,筋音図は筋収縮に伴って体表面で観察される微細振動をトランスデューサで導出記録したものであり,筋の機械的な活動を反映すると言われ,近年,筋電図と伴に筋の活動状態を記述するための非侵襲toolとして有用視されている。 本研究ではまず筋長の変化が筋音図特性に及ぼす影響を取り上げた。足関節の角度で長さをコントロールでき,共働筋の少ない前脛骨筋を対象とした。足関節角を背屈50度から底屈60度の間の任意の角度とし,それぞれの関節角度において等尺性に5〜80%MVCまで10%MVC/sで力を増加させるランプ状力発揮を行わせた。この時に前脛骨筋に設置した表面電極と加速度計によって,筋電図と筋音図を導出記録した。筋音図の振幅の変化傾向は中間位を標準とすると背屈,底屈において異なった様相を示し,それぞれの筋長における筋収縮の相違を反映すると考えられた。現在,時変時系列解析法を用いてさらに分析を続行している。一方で,動的筋収縮時にも的確に筋音を導出するためには,体表面のような柔軟な表面上の振動計測におけるトランスデューサの挙動を把握し,その性能を確実なものとする必要がある。本研究では震動源としてピエゾアクチュエータを採用し,シミュレータの開発を行った。レーザ変位計を用いて発生させた振動を検討した結果,1Hz〜100Hzの周波数範囲の1〜10μmppの振幅を発生することができることを明らかにした。これは,筋音を変位として検出するトランスデューサを対象とする場合には充分な性能を持つことを意味する。さらに,シリコンゴムを利用したシミュレーションを継続している。
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