厚さ0.1mmのパラジウム板上にCaOとパラジウムの薄膜を積層させ、さらにパラジウム薄膜面上に微量Csを添加させたパラジウム板を陰極として重水素雰囲気中で放電を継続し、CsからPrへの元素変換を中心に新たな元素への変換確認とそれに伴う過剰熱測定を試みた。その結果、既に報告されているPr生成は確認できなかったが数種の極微量元素が変換生成された可能性がある。グロー放電よりもコロナ放電の方が生成効率は高い。生成微量元素にはZn以上の質量数をもつRh、Sn、Sb、Cs、Baが含まれる。SbとBaはいずれの場合にも検出された。これらの元素は試料を取り扱う際の混入不純物と考えることは困難である。さらに放電中に陰極にレーザー光を照射するとこれらの元素に加えて極微量のAg、Isが生成されている可能性が高い。他方、パラジウム板の片面に金または銅を表面修飾した薄膜付試料に重水素を吸蔵後、真空中においてこの試料に直接一定電流を24時間流した場合、銅薄膜をもつ試料で銅膜付側に電流投入接点をとったときのみ異常発熱と投入電力の上昇が観られた。この異常発熱は抵抗変化では説明困難な場合がある。 また、補足実験として、放電を起こさず、上述の微量添加Csと積層薄膜をもつパラジウム試料の薄膜面を約1気圧の重水素ガスにさらし、反対側を真空として2週間保ち、この試料中を重水素を透過させた。透過後に薄膜側をTOF-SIMSにより分析すると、スペクトル上で質量数137に顕著なピークが表われた。質量数が8増加してPrが形成される前に、質量数が4増加して^<137>Laまたは^<137>Baが形成されたと考えられる。この結果はアルファクラスターの役割が重要であることを示唆している。
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