直流電気鉄道では、車両がレールの絶縁部を通過する際にレール端部と車輪との間でアーク放電が発生する場合があり、レールの溶損および轟音が問題になっている。本研究では、キロアンペア級のき電電流によるアークの発生を実験室内で模擬するためのモデルおよびアークを抑制するための装置を開発し、アークの抑制効果を確認した。以下に平成16年度の研究実績の概要を記す。 1.電流容量1キロアンペア級の電気車及びき電回路モデルの製作 電気車がレール絶縁部を通過する際の現象を実験室内で模擬するためのモデルを製作した。大電流の直流回路を製作するのは現実的でないので、電気車がレール絶縁部を通過する時間を含む約10msの間は十分直流と見なせる1kAパルス電源を製作した。電気車は空気圧シリンダを動力として、遠隔操作により駆動するものを製作した。このモデルを用い、0.8kAまでの電流を車輪からレールに通電させながら時速20kmでレールの継ぎ目を通過させ、アークの発生およびレールの溶損を模擬した。 2.エネルギー吸収方式によるアーク放電抑制装置の製作 レール間電圧を検知し、これが基準電圧を超えたときに別回路に電流をバイパスさせ、アークを発生させるエネルギーを別回路に消費させる方式によるアーク放電抑制装置を製作した。この装置はレール電圧検出部・エネルギー吸収回路始動スイッチおよびエネルギー吸収用抵抗で構成される。高速動作を実現するために、エネルギー吸収回路始動スイッチとして電界効果トランジスタを複数並列に接続したものを用いた結果、応答時間3μs以下の動作が可能となった。また、1kA通電時の端子間の電圧降下を14V以下に抑えることができた。このアーク放電抑制装置を実験室内のき電回路モデルに接続し、基準電圧を11Vに設定したとき、0.5kAまでのレール電流に対して大幅なアーク抑制効果があることを確認した。
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