1.下向きリーダが先行する複数の落雷があることが期待できる計装された鉄塔の近傍の電磁界観測場所を、栃木県鹿沼市に選定した。電磁界観測装置は、電流測定・カメラ観測のため計装されている100m級UHV送電鉄塔から100m程度の場所に、2004年5月下旬に設営した。観測装置は無人で24時間運転されている。補助金の交付決定に先立って観測装置の設計・製作を行ったため、当初の計画よりも約1ヶ月早く装置を設営することができた。しかし8月にデータ回収を行ってデータ解析を行った結果、観測装置の不具合が判明したため、10日後に装置を回収、補修し、9月上旬に観測を再開し、10月末まで観測を継続した。回収したデータを解析したが、今年度は有効なデータが得られなかった。 2.高鉄塔に落雷があった際の、近傍から遠方に至る電磁界の発生様相について、帰還雷撃モデルを用いて解析し、初めて大地導電率の影響も含めた評価を行った。その結果、遠方の電磁界ピーク値への高構造物の影響は、従来報告されていたより少なく、第1帰還雷撃のように雷電流の立ち上がりが緩やかで、かつ構造物の高さが100m程度以下の場合は、構造物の影響は無視して差し支えないことが新たに判明した。 3.公表されたロケット誘雷近傍の電磁界の観測結果を用いて、後続雷撃初期の0.5マイクロ秒程度までに生じる現象を説明するための工学モデルを検討し、観測結果をかなりよく再現できるモデルを得た。この結果より、後続雷撃の帰還雷撃電流波は、地上数mの上向き・下向きリーダの結合点から大地と上方に向けて進行を開始し、その速度は光速の数分の1で、大地面で電流波の反射が生じていることが推測される。
|