平成16年度では500Aクラスの超伝導トランスを用いて直流通電を試みたが、もともと大電流を得るために設計されていた交流トランスであったために、十分長い時間にわたっては直流を保つことができなかった。平成17年度では電流はそれほど大きくないが、十分な時間にわたって直流の制御ができる超伝導トランスを新たに設計し、試験をすることとした。二次側の通電電流は低抵抗のシャントを挿入してその両端に発生する電流から測定した。この電流値を一定にするために、一次側に流す電流をPID制御する。その結果制御時間は10秒程度の時間となった。また制御の精度は0.4%であり、1PPMというレベルからはかなり離れている。 平成18年度においてはこれらの知見を生かしてより精度を上げる工夫をした。精度を上げるためには、二次側の電流を精度良く測定する必要がある。そこで、二次側に発生する磁界をホール素子とピックアップコイルにより測定し、その測定値を元に一次側の電流を制御する。この結果、ホール素子よりもピックアップコイルの方が精度よく電流を観測することができ、二次側の電流をより一定にすることができた。 今回の研究を通じて超伝導トランスの直流動作を行うことができることを実証することができた。また高安定磁界の発生については、いくつかの方法を提案し、実際に実施した。今後、これらの結果をさまざまな超伝導機器に応用することができると考えられる。たとえばNMRやMRIなどの高精度な磁界安定を求められる機器において、今回の知見が生かされる可能性がある。
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