今年度は、昨年度インバータのスイッチング素子として用いる予定であったパワーMOSFETの納期が遅れ、基礎データの収集と駆動回路の検討が遅れたため、まず過熱蒸気発生用の高周波インバータ部をノーマリーオン形とノーマリーオフ形のSITを用いて製作した。ノーマリーオン形は200kHz、ノーマリーオフ形が25〜50kHzで動作する。200kHz用の高周波インバータの主回路はフルブリッジ方式、25〜50kHz用はシングルエンデット方式である。両高周波インバータ部とも基礎実験であるため、出力電力は1.5kW程度で実験を行なったが、良好な誘導加熱を行なう事ができた。高出力化には電源電圧の上昇とスイッチング素子の並列接続で対応する予定である。同時に、平成16年度末に納入されたパワーMOSFET(1000V/70A)について検討し最適周波数を決定するため種々の検討も行ない、また駆動回路の設計も行なった。パワーMOSFETを200kHz〜300kHzで動作させる駆動回路については、未だ検討しなければならない部分もあるが、平成18年度にはパワーMOSFETを用いた高周波インバータ部も製作する予定である。そのため、次年度には25〜300kHzの範囲で動作するシリーズ化したインバータ部が出来上がる事になる。次に、今年度は昨年度に製作した過熱蒸気発生用の負荷部の一部を変更した。昨年度はワークコイルに電力用リッツ線を使用したが、今年度は水冷用の銅パイプ(直径10mm)を使用して製作した。この理由は、電力用リッツ線を使用した場合はワークコイルが損失で熱くなり、その結果長時間の動作に問題が生じたためであるが、この変更によって長時間の動作が可能となった。現在、加熱対象は空気を用いて実験を行なっている。
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