数値電磁界解析法を使用し、電気設備の過電圧発生を正確に予測する技術の確立を目的として研究を進めている。平成18年度では、数値電磁界解析用シミュレータを使用し、以下のような結果を得た。 前年度に行った撚り線ケーブルのサージ特性解析法については、論文にまとめ、電気学会に掲載決定となった。さらに、このケーブル解析モデルの応用として風力発電設備のサージ解析を行い、ケーブルの接地条件による過電圧発生現象を明らかにすることができた。 これまで、モーメント法で、変圧器の過電圧解析で問題となる表皮効果が正確に模擬できることを、数値電磁界解析法のFDTD法による解析結果の比較から明らかにしてきたが、さらに実験との比較を行った。配電用変圧器の鉄心コアに20回の巻き線を設け、そのサージ特性を直角波応答から検討した。実験は、鉄心、空芯のソレノイド、表皮効果を調べるための銅板コアの巻き線の各モデルについて測定した。同じジオメトリのモデルをモーメント法で作製し、数値シミュレーションを行ったところ、空芯と銅板コアについては、実験と解析は良い一致を示したが、鉄心コアの場合、解析では空芯コアの特性に近い結果を示し、実験とは一致しなかった。そこで、層状コアのモデルの作製を試みたが、現在の解析システムでは、計算資源の制限から数10層が限界であり、実用的な変圧器コアの数100層のモデルは解析できないことが明らかになった。モーメント法以外の方法、特にFDTD法についても検討したが、鉄のように高透磁率で導電率が高い場合には、表皮深さがmm以下となり、モデル化できないことが判明した。そこで、新しく、等価ソリッド鉄心モデルを考案した。鉄心のジオメトリと材質から、積層鉄心をソリッド(塊)状のモデルで作製する方法であり、試行計算では、実験結果とよく一致する結果が得られた。今後、モデル作製の理論の構築と、解析と実験の照合を進める。
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