研究概要 |
電力市場の規制緩和・自由化の進展により,電力事業を取りまく環境は,電力託送や独立系発電会社などの多様な事業形態が混在する環境へと移行しつつある。しかしながら,電力の自由化という世界的な流れの中で,供給信頼度の点でさまざまな問題が顕在化してきたように思われる。 このような背景を踏まえ,本研究では,多数の参入者(プレーヤー)から構成される新しい電力自由化市場の環境下においても,電力エネルギーの信頼性確保が可能となる電力エネルギーの広域運用制御方式の枠組みについての研究を実施した。特に,信頼性確保の面から最も重要である発電と流通の部門にターゲットを絞り,事故時の「緊急操作制御」,および流通設備の信頼性を維持するための「協調平常時操作制御」の方式を開発した。 まず,緊急操作制御として,マルチエージェントによる事故復旧システムと免疫機能を適用した事故復旧システムについて検討した。前者は,発変電所に実装したエージェントが個々の知識を用いて近隣発変電所に実装されているエージェントと連携して事故復旧を迅速に実行するものである。後者は,知能情報処理の一分野として近年注目されている免疫型システムを電力系統事故復旧に適用したものである。いずれもモデル系統上でその有効性を確認することができた。 次に,協調平常時操作制御として,マルチエージェントによる電圧無効電力制御システムについて検討した。電力自由化の進展とともに分散電源や電力取引の増大により電力系統内を流れる潮流は今後ますます複雑化・不確実化してくることが予想されている。協調的な自律分散制御システムとしてマルチエージェントによる電圧無効電力制御方式を提案し,モデル系統上でその有効性を確認することができた。
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