これまではZnO: In:N系薄膜を作製し、ZnO:In薄膜の電気的特性に対する窒素や酸素の影響、および基板加熱の影響などについて検討を行ってきた。本年度は、ZnOに対して抵抗率を低下させる効果を有するIII族元素、およびZnOに対して抵抗率を増加させる効果を有するCuを同時に縮退レベルまで添加することによるZnO薄膜の特性の変化について主に検討を行った。 ZnO薄膜は、高周波マグネトロンスパッタリング法により、サファイアc面単結晶基板上に作製した。作製時の基板温度は最高500℃までとした。ターゲットには種々の割合でAl_2O_3およびCu_2Oを用いた。また、スパッタリングガスとしてはArガスを用い、高周波電力は130W程度とした。 ZnOに対してAl_2O_3を添加することで、得られる薄膜のキャリア密度が増加することにより抵抗率は低下する。Al_2O_3を2wt%添加した場合にはキャリア密度は10^<20>cm^<-3>程度と非常に高くなる。これに対してCu_2Oを同時に添加すると、その添加割合の増加に伴い抵抗率は10^<-3>から1Ω・cm程度まで徐々に増加した。その結果、Al_2O_3を2wt%、Cu_2Oを1wt%同時に添加したZnO薄膜については抵抗率の温度依存性において100ppm/℃以内の抵抗温度係数が得られることが分かった。 なお、ZnOにMgOを混合したZnMgO薄膜の作製も一部試みたが、高いキャリア密度を保ったまま抵抗率を増加させることができる可能性があり、引き続き検討している。
|