Ni/NiOプレーナ型2重強磁性トンネル接合では、2重障壁層に挟まれたアイランド電極のサイズを10nmオーダーに加工することが可能であり、帯電効果の検証が期待される。この基盤構造である微小強磁性トンネル接合を、高周波マグネトロンスパッタ装置にて成膜したNi薄膜(膜厚8〜20nm)を電子線リソグラフィまたはフォトリソグラフィとドライエッチングによりパターニングして作製した。さらに、このパターン薄膜に原子間力顕微鏡(AFM)を用いた局所酸化を施すことにより、Ni/NiOプレーナ型2重強磁性トンネル接合が形成される。 作製したプレーナ型強磁性トンネル接合は室温にてもダイオード特性を示したことから、AFM局所酸化により形成したNiOが障壁層として機能していることを確認した。またプレーナ型強磁性トンネル接合のトンネル磁気抵抗効果を制御するためには、強磁性金属電極(Ni)の磁化制御・磁区構造制御が不可欠である。AFM局所酸化加工をベースとしたナノリソグラフィにより磁区構造の分割制御、及び磁気異方性の制御が可能であることを見いだした。 電子線リソグラフィによりパターニングした試料では幅100nmの細線構造を有している。この細線構造では、直流抵抗の増大に伴い、AFM局所酸化における印加電圧しきい値も増大する傾向が見られ、安定した障壁層の形成が困難との課題も発生した。そこでAFM局所酸化における酸化過程を検討することにより、細線構造においても安定した障壁層の形成を試みた。AFMナノ酸化をタッピングモードを用いて実施したところ解決された。Simmonsの計算式によるフィッティングから、壁高さ1.5eV、障壁層厚1.7nmが得られ、所望のトンネルダイオードが形成されていることが明らかとなった。これらの研究成果は帯電効果を発生させるのに十分なデバイス作製方法を確立させるものである。
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