Li二次電池の陽極活物質層として、スピネル構造をもつ、マンガン酸化物(LiMn_2O_4)を考えている。本研究では、反応性蒸着法によりハウスマナイト(Mn_3O_4)薄膜を生成している。反応性蒸着法では、蒸発物の金属Mnが酸素雰囲気中で酸化し、蒸着回数を重ねるにつれて、蒸着速度が減少するという重大な問題がある。薄膜組成の再現性を向上するためには、この蒸着速度を安定化する事が必須である。 平成17年度は、SUSセルを使用した酸化防止法をさらに洗練し、最適蒸着条件を調査した。これまでの研究で、初回の蒸着速度を15Å/s程度に設定することにより、Mn_3O_4薄膜が生成できることが分かっている。SUS cellの長さを10mmから70mmまで変化した時の蒸着速度について調査した。その結果、Mn_3O_4の結晶を生成するには、SUS cellの長さが30mmが適していることが分かった。 次のステップとして、Liを含むMn酸化物薄膜の生成を試みた。具体的には、これまでの金属Mn用るつぼに加えて、新しくLi用のるつぼを設置した。Li用蒸発物として、LiNO_3を使用した。まず最初にLiNO_3の蒸発条件を調べた。その結果、は400℃付近から急峻に蒸発が開始されることが分かった。そこで、LiNO_3のるつぼ温度を400℃に設定し蒸着を試みた。その結果、LiNO_3が蒸着できることが分かった。 次にMn_3O_4薄膜中にLiを挿入する方法を考案した。試行錯誤の結果、Mn_3O_4層でLiNO_3層をサンドイッチする方法を考案した。すなわち、Al基板上に第一Mn_3O_4層を蒸着し、その後LiNO_3層を蒸着する。基板をLiるつぼ上に移動した後、第二Mn_3O_4層を蒸着する。このサンドイッチ構造でLiを閉じ込めることが出来れば、Liを含むMn酸化物薄膜が生成できると考えている。この三層構造の薄膜を作製しX線回折法で結晶構造を調査した。その結果、Mn_3O_4のピークは観察できたが、LiMn_2O_4のピークは得られていない。この原因は、蒸着されたLiが、第二Mn_3O_4層を蒸着する際に最蒸発しているためであると考えている。 この問題を解決することが次年度への課題である。
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