研究概要 |
自然冷媒である二酸化炭素を用いた冷凍サイクルにおいて,圧縮/膨張ユニットを組み込んで絞り損失を回収することによりエネルギー効率向上を図る試みとして,今年度は広い運転範囲におけるべーン形膨張機の運転特性,スクロール形膨張機の性能に対するスクロール背圧の影響,膨張/圧縮ユニットを組み込んだサイクルの運転特性について検討した. 膨張機入り口における流体の状態はガスクーラ出口温度により大きく変化するが,ベーン形膨張機では広い運転範囲において膨張機性能が維持されることが明らかとなった.また,遷移臨界膨張過程は,超臨界域から二相域に入るときにガス相から入るのか液相から入るのかによってその膨張過程が大きく異なり,膨張機入り口温度が低い場合には飽和圧力以下に圧力が下がっても蒸発が開始しない「蒸発遅れ」があることが分かった.一方スクロール形の膨張機ではスクロール歯形を支えるスクロール背圧が性能に及ぼす影響を検討し,背圧が最適の場合には圧縮機の部材をそのまま用いた膨張機でも全効率は56%となり,最適設計により十分な膨張機効率が得られるであろうことが示唆された. 膨張機と2段目の圧縮機が一体となる圧縮/膨張一体形機を試作し,回収した膨張動力により0.6MPaの圧縮動作を得た.一体形機を組み込んだ冷凍サイクルの運転バランス点およびサイクル性能を,膨張機と圧縮機それぞれの性能特性を考慮して検討したところ,膨張弁を用いたサイクルに比べ約21%の性能改善が得られることが分かった.また,運転条件が異なる場合にバランス点における放熱圧力が小さくなるとサイクル性能が低下するが,膨張機前に絞りを入れて放熱圧力を最適に保つことにより性能改善が得られることが示された.これらの値は性能の良い膨張機を使用することでさらに向上し,二酸化炭素冷媒を用いた家庭用エアコンの実現に対し,その可能性を示すものである.
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