本年度は、超高真空蒸着装置によるGe_<1-x>Mn_xTe/MnTe積層膜の成長、Ge_<1-x>Mn_xTe細線における磁化、反転実験およびシミュレーションを行った。 1.薄膜作製と磁気特性の検討 反強磁性MnTeと強磁性GeMnTeの積層膜を超高真空蒸着装置を用いてSrF_2基板上へ作製した結果、50Oeの交換結合磁界を得た。また、様々なキャリア濃度やMn組成をもつGeMnTe試料において、相転移特性および磁気抵抗の電流に対する印加磁界角度依存性の測定を行い、より詳細に検討した。また、ピニング磁界の分散を想定したシミュレーションを用いたフィッテングを行った。その結果、高磁界における負の磁気抵抗効果が大きい試料ほど、シミュレーションにより得られるピニング磁界が大きいことがわかった。このことから、ピニング磁界は磁気ポーラロンの介在によるものと考えられる。 2.微小細線における磁化反転実験 電子ビーム描画装置を用いて膜厚やMn濃度の異なる細線の作製を行い、磁気輸送特性の測定を行った。その結果、膜厚400nm、Mn濃度x=0.25の試料において、細線幅が2μmから0.8μmと減少するにつれ、零磁場における磁化の傾きが抑制されるとともに磁化反転磁界が大きくなった。しかしながら、磁界を細線の長手方向と短手方向に印加した場合の磁気抵抗曲線に顕著な差はみられなかった。1で述べた磁気抵抗の印加磁界角度依存性の結果と併せ、今回の試料においては、局所的な磁化反転が支配的であるといえる。 3.マイクロマグネティックシミュレーションによる磁化反転機構の評価 膜厚や磁気異方性をパラメータとしたシミュレーションを行った。その結果、膜厚が200nmを越すと磁壁の生成により膜厚の増加につれて磁化反転磁界はむしろ低下することがわかった。
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