研究概要 |
クリーンで無尽蔵な太陽エネルギーを利用した太陽光発電が注目されている。この太陽光発電を実用化させるためには、高効率・低価格な太陽電池を開発することが重要な課題である。本研究では、光吸収係数が大きいことから薄膜化による低コスト化およびバンドギャップを理論最適値に調整可能なことによる高効率化が期待できるカルコパイライト型半導体薄膜を取り扱う。太陽電池の変換効率が18%を超えるCu(In,Ga)Se_2カルコパイライト型薄膜は、単元素を蒸着源にした多元蒸着法で作製されている。本研究では、この方法とは異なる、太陽電池の作製に要求される大面積化に適用可能な新しい手法(三元化合物シーケンス蒸着法)を用いる。この手法により、Cu(In,Ga)(S,Se)_2カルコパイライト型薄膜を作製し、太陽電池用として具備すべき特性を有する材料の作製方法を確立する。さらに、太陽電池を試作し、その特性を評価する。初年度は、以下の成果を得た。 (1)Cu(In,Ga)Se_2薄膜の作製 Mo/ソーダライムガラス基板上に、CuGaSe_2/CuInSe_2を順次蒸着した。この薄膜をプリカーサとして、基板温度を550℃に上昇させた後、SeまたはInSe蒸気を供給しながらCu(In,Ga)Se_2薄膜を作製した。その結果、この方法を用いることにより、カルコパイライト構造を有し、組成とバンドギャップを調整可能な薄膜を得ることができた。さらに、太陽電池の発電を確認した。 (2)Cu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜の作製 Mo/ソーダライムガラス基板上に、CuGaSe_2/CuInSe_2/InSを順次蒸着し、Se蒸気を供給しながらCu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜を作製した。また、CuGaSe_2/CuInGaSe_2にS/Se蒸気を供給し、Cu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜を作製した。その結果、いずれの手法においても、カルコパイライト構造を有する薄膜を作製できた。さらに、Cu(In,Ga)(S,Se)_2薄膜太陽電池を試作し、その発電を確認した。
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