研究概要 |
本研究では、大面積化に適用可能な新しい手法(三元化合物シーケンス蒸着法)により、Cu(In, Ga)(S, Se)_2カルコパイライト型薄膜を作製した。さらに、太陽電池を試作し、その特性を評価した。 (1)1段目にCuGaSe_2とCuInSe_2、2段目にIn_2Se_3を蒸着した後、3段目にSe蒸気を供給しながらCu(In, Ga)Se_2薄膜を作製する新しい成膜プロセスを検討した。2段目のIn_2Se_3供給量を調整することにより、Cu(In, Ga)Se_2薄膜の表面組成を最適領域に制御できた。 (2)上記(1)の成膜プロセスの2段目にIn_2Se_3とIn_2S_3を同時に蒸着することによりCu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜を作製した。2段目のIn_2S_3供給量を大きくしていくことでCu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜内のSの混入量を増加することができた。さらに、Cu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜太陽電池を試作し、開放電圧の向上を確認した。 (3)Mo/ソーダライムガラス基板上に、CuGaSe_2/CuInGaSe_2を順次蒸着し、この薄膜をプリカーサとして、InS+Se混合蒸気を供給しながらCu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜を作製した。熱処理温度の増加とともにCu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜の粒径が増大した。その結果、太陽電池の短絡電流の増加が確認できた。 (4)上記(1)で開発した成膜プロセスを用いて作製したCu(In, Ga)Se_2薄膜太陽電池で、開放電圧330mV、短絡電流28.3mA/cm^2、曲線因子0.461、効率4.31%が得られた。また、InS化合物をS源として用いることで、太陽電池の開放電圧の向上が認められた。 以上の結果、高効率・低価格な新型薄膜太陽電池を作製するための材料として、三元化合物を出発材料にしてCu(In, Ga)(S, Se)_2薄膜を創製できる方法を明らかにすることができた。さらに、太陽電池を試作し、更なる高効率化への方向性を示すことができた。
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