研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、高い読み出し信号比を有するMRAMの創出に向け、共鳴トンネルダイオード(RTD)やバンド間トンネルダイオード(ITD)をはじめとする負性抵抗(NDR)素子と、強磁性トンネル接合(MTJ)を組み合わせた融合回路を開発することである。具体的には、MTJとNDR素子の直列または並列接続集積構造を有するMRAMセルを構成し、そのピーク電圧もしくはピーク電流がMTJの磁化状態により明確に変化することを利用する。まず、NDR素子としてGaAsバンド間トンネルダイオード、MTJとしてCoFe/AlOx系MTJを用い、その磁気抵抗(MR)比が最大890%と飛躍的に増大できることを実証し、本研究の基本原理を確認した。次に、MTJ素子ならびにNDR素子の構造最適化を図り、MTJ素子では、Co系ホイスラー合金やペロブスカイト型Mn酸化物、さらには、強磁性半導体を用いたMTJを試作し、室温で、最大90%におよぶ大きなMR比を得た。これにより、実用的なバイアス電源の設定マージンを確保できる見通しが得られた。また、NDR素子としてRTDを検討し、ピーク・バレイ電流比の大きい2重量子井戸型RTDを分子線エピタキシャル成長法により作製し、その構造と電気的特性の関係を実験的に明らかにした。メモリセルの構成として、RTDとMTJを直列接続した場合と並列接続した場合、また、セル選択用トランジスタを用いる場合と用いない場合のそれぞれについて、回路性能と作製プロセスの両面から各方式の特徴を明らかにした。また、実験的に得られたMTJおよびRTDの素子特性を組み入れたSPICEモデルを構築し、試作したプロトタイプセルの評価結果をベースに、セル占有面積、アクセス速度、消費電力、動作マージン、などのメモリ性能が集積度向上につれてどのように推移するかを回路シミュレーションにより解析した。これにより、高速・大容量のMRAM実現の観点から、本研究のRTD/MTJ融合システムのポテンシャリティの高さを示した。
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