研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続いて,磁気転写技術を実用化する際に重要となる基礎的事項を明らかにするための実験とコンピュータシミュレーションを推進した. まず第1に,転写時の転写磁界印加方向の影響について検討した.スレーブ媒体膜面に平行かつマスターパターン方向に垂直に転写磁界を印加することが理想であるが,現実にはこのようにはできず,面内方向及び法面方向において斜め磁界が印加される.この斜め磁界の影響を転写実験により定量的に見積もり,影響のメカニズムを2次元有限要素法を用いたコンピュータシミュレーションによって明らかにした.この結果は,次世代サーボ方式である位相サーボパターンを転写する際にも有用である.本研究の成果は,学会,学術誌論文により公表した. 第2に,転写条件と再生出力,再生波形との関連を,約10倍の拡大モデル実験により調べた.ビット長が数μm〜10μmのマスターを用いて,スレーブとしての薄層メタル塗布型磁気テープに転写を行い,ドラムテスタにより再生出力を測定した.その結果,再生波形に及ぼす転写磁界強度及びマスター媒体構造の影響や,サブピークの様子等が明らかになった.本研究成果の一部は,学術誌論文により公表した. 第3に,垂直磁気ディスク用磁気転写の検討を行った.垂直磁気記録方法を採用したハードディスクが実用化され始めた現状において,これは急を要する研究である.本年度は,拡大モデル実験及び3次元有限要素法によるシミュレーションを実施し,面内磁場印加方式の方が垂直磁場印加方式よりも優れた転写特性を有することを明らかにした.この内容は学術論文誌として公表した.
|