本研究計画は、所望の周波数・波形・波長数を持つ光信号源の実現手法の開発と評価であり、今年度は以下のような成果を得た。 まず、基準のクロック信号と多波長光信号を用いて、所望のパルス波形(パルス幅)を持つ多波長信号源の実現を試みた。従来から研究対象としている半導体光増幅器スイッチを用いたパルス幅・波長変換素子を利用することによって、30nmを超える広波長帯域内において、最大16チャンネルの出力を持ち、光パルス幅が10psから90psの範囲で可変可能な多波長光パルス信号源を実現した。半導体光増幅器の利得飽和及び非線形性・キャリア回復時間の縮小を抑制するために多波長信号入力電力を2dBm以下に制限することで、非線形性のない多波長出力信号スペクトルが得られた。生成された光パルス信号の時間ジッタはおよそ240fsであり、基準クロックの持つ時間ジッタ(約220fs)と比較しても微小なジッタ劣化で信号生成が可能であることがわかった。さらに、生成した光信号を、10Gb/sのランダム信号で変調して得られる高速光信号の符号誤り率特性測定によって、全ての波長チャンネルで良好な信号品質を確認した。 次に、単一の光源から簡単に多波長光を得る手法として、位相変調器を用いたファブリ・ペロー形多波長光ファイバレーザを取り上げた。多波長発振励起のための位相変調器への駆動波形として、正弦波と鋸波・矩形波・三角波の4種類を考えたが、多波長発振困難であった従来のリング形ファイバレーザとは異なり、いずれの波形においても多波長発振が可能となった。さらに、リング形レーザにおいては波長発振スペクトルの大きな不均質が見られたが、本研究のファブリ・ペロー形レーザにおいては、波長間隔0.44nm、波長帯域5nmにわたる3dB以内の強度均一性を持つ優れた多波長発振スペクトルが得られた。 なお、単一周波数光ファイバレーザを用いた周波数同期低雑音光源については今年度は特記すべき成果は得られなかったので、来年度に引続き周波数安定度の向上を目指す。
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