平成16年度の研究においては、高速・高周波化情報通信機器の基盤回路におけるEMCの設計理論の確立をめざして、次に挙げる課題について研究を実施し、今年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.複雑な形状の電源/グラウンド層問題 (1)電源/グラウンド層間のEMC問題である共振現象を表現する手法として級数展開による解析と等価回路表記を提案した。 (2)共振現象において発生する不要輻射となる電磁界の挙動を調べるために新しく開発した磁界測定から電界を推定し、電力流の流れであるポインティングベクトル測定法に関しては、磁界測定用ループプローブの大きさと磁界の変化率が測定精度に大きく寄与し、そのため電界推定に大きな影響を及ぼすことを明らかにし、ポインティングベクトル測定の精度が要求される場合は大きな誤差となってでてくることの知見を得た。 2.スリットを跨ぐ伝送線路系でのEMC問題 (1)異なる電源層を跨ぐパターン配線問題では、パターン線路からは電源層がグラウンド層と同等のものとして取扱える。グラウンド層にスリットが存在する場合の伝送線路の振る舞いについて実験的な検討を行った結果、伝送線路とグラウンド層のスリット間では磁界結合が結合メカニズムを左右するものであることの知見を得た。数値解析の結果と実験結果は良く一致するものであったが、この伝送線路とスロットとの結合現象を定式化する検討をおこなっている。 (2)副産物として、スリット間結合を利用するマイクロ波回路が上記の応用として考えられ、フィルタや電力分配器などへの応用を検討した。
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