波長0.633μmの可視光で動作する多モード干渉(MMI)導波路カプラを設計するため、まず、数値計算により、MMI導波路カプラの入出力特性を明らかにした。導波路を実現するための屈折率差の形成には、ガラス中のナトリウムイオンをカリウムイオンや銀イオンで交換する、イオン交換を想定した。また、光波伝搬のシミュレーションにはFD-BPM(差分ビーム伝搬法)を用いた。カリウムイオン交換の場合、屈折率差は0.02程度であり、多モードにするため、MMI導波路の導波路幅をある程度大きくする必要があるが、大きくしすぎると、MMI導波路が長くなるだけでなく、出力パワや界分布などの特性が悪くなることがわかった。銀イオン交換の場合、屈折率差は0.1程度であるが、MMI導波路の導波路幅・長さとも短縮化が図れることがわかった。これらを基にして、導波路パターンの作成誤差の影響を明らかにした。MMI導波路の導波路幅よりも長さのほうが、寸法の許容誤差が大きいことがわかった。 上記の数値解析結果に基づき、モード多重素子の設計を行った。赤外光での設計例と比較すると、カリウムイオン交換の場合、素子長は大きくなり数倍程度になることがわかった。銀イオン交換の場合は、同程度あるいは同程度より短くできることがわかった。 更に、電子ビーム描画システムにより、MMI導波路カプラのパターンの形成を試みた。寸法の精度は必ずしも十分とはいえず、今後、照射電子ビーム量の設定についての検討が必要であることが明らかになった。
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