研究概要 |
多モード干渉(MMI)導波路カプラを用いたモード多重・分離素子の設計・作成のため、素子の動作の解析および導波路パターンの作成法について研究を行った。解析では、波長特性と時間応答について、パターン作成法では、電子ビーム描画システムにおけるステージの移動制御について検討を行った。 波長特性の解析には、FD-BPM(差分ビーム伝搬法)を用いた。多重・分離の対象となるモードの次数が高くなるほど素子の特性は狭帯域となるが、これは干渉領域で励振されるモードがより高次に及ぶためと考えられる。そこで、励振されるモードの次数を抑えるためのMMIカプラの構造を明らかにした。0次,1次,2次モードを多重した場合、設計波長から-10dBまでの帯域幅は約2倍になった。 時間応答の解析には、FDTD法(時間領域差分法)を用いた。干渉領域で励振されるモードがより高次に及ぶほど、干渉領域の終端での反射が大きいことがわかった。また、干渉領域の長さを近似理論による値から調整することにより、出力を向上できることを明らかにした。 本研究で用いる電子ビーム描画システムは、インチワームモータをアクチュエータとする精密微動ステージをもち、光学式エンコーダでステージの移動量を知ることができる。インチワームモータはパルス列で駆動され、パルスの繰り返し周波数で移動速度が決定されるが、与えるパルス数によって、移動距離の誤差率が変化し、パルス数が少ないほど誤差率が大きくなり、そのばらつきも大きくなることがわかった。そこで、ステージ移動命令とエンコーダデータ取り込み命令の与え方を工夫したところ、1mmの移動に対して平均で10nm未満、最大で100nm未満の距離誤差で移動することができた。
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