昨年度に続き、レーザーアブレーション法を用いて、シリコン微結晶膜からなる平面型エミッタを製作し、電子放射特性の評価を行った。シリコン微結晶膜の形成には、Nd : YAGレーザー(4倍波:波長266nm)を用い、成膜の際、RFラジカル源により酸素ガスをラジカル化して基板表面に照射し、シリコン微結晶の表面に極薄酸化膜を形成している。 本年度は、主に、酸素ガス雰囲気中で成膜した素子と酸素ラジカルビームを照射した素子を製作し、酸化の影響を比較するとともに、上部電極の膜厚を変化させて、電子放射特性の評価を行った。 動作実験の結果、酸素ガス雰囲気中で成膜した素子および酸素ラジカルビームを照射した素子ともに、電子放射は、Auゲート電極の仕事関数付近の低電圧から計測された。しかしながら、酸素ガス雰囲気中で成膜した素子は、ゲート電極へのリーク電流が非常に大きく、数百pA程度の放射電流であるのに対し、酸素ラジカルビームを照射した素子では、リーク電流がmA程度以下に減少すると共に、放射電流密度も2桁以上増大し、酸素ラジカルビーム照射による酸化の効果を確認した。また、ゲート電極の膜圧をnmオーダーで制御することで、最大4%の電子放射効率(トータル電流に対するエミッション電流の比)が得られた。今後、成膜条件ならびに酸化条件、ゲート膜厚等の最適化により、放射電流量ならびに電子放射効率の改善を図ると共に、エネルギー分析により、電子放射機構について検討する予定である。
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