本研究は、低電圧駆動アナログ設計技術、低消費電力駆動アナログ設計技術、およびアナログシステムLSI自動化設計技術、の3つの要素技術の確立により達成できる。本年度は、低電圧駆動アナログ設計技術、低消費電力駆動アナログ設計技術の確立に関する研究を行った。 低電圧駆動アナログ設計技術に関しては、情報通信用アナログ集積回路を実現する際の要素回路である低電圧駆動の掛け算回路の設計において、昨年度課題とされた低電源電圧化を達成するために、回路構成の検討が行われた。次世代携帯機器への応用が十分に可能な性能を持つ要素回路が実現され、電子情報通信学会論文誌にこの成果を報告した。また、低電圧駆動回路における基準電圧発生のための回路の検討を行った。MOSFETの弱反転領域と線形領域の動作を組み合わせることで、MOSFETのみで構成可能な基準電圧発生回路を提案した。1V前後の電源電圧で、0.6V前後の出力を発生可能な基準電源であり、現在の寄生バイポーラを用いたバンドギャップリファレンス回路に取って代わる技術となりうる。これらの成果は、電気学会研究会で報告すると共に、高い評価を得た。回路の試作を行い、信頼性の評価を行うことが今後の課題となる。 低消費電力駆動アナログ設計技術に関しては、弱反転で動作するMOSFETを用いた温度センサに関する研究を行った。提案回路では、MOSFETの動作領域を弱反転領域に限定させることで線形性の補償された温度センサをより低消費電力で実現可能であることが確認され、その動作を理論的に説明した。また、今後の微細化プロセスのもとで問題となる、MOSスイッチでのリーク電流を低減するための工夫として、基板効果を利用した低リークMOSスイッチに関する研究を行った。提案手法は、待機時にMOSFETのソースの電圧を調整することにより、基板バイアス効果を利用してリークの低減を計るものである。
|