本研究の目的は、プラスチックファイバを用いた短距離光リンクへの応用を念頭に、高速高感度の大面積可視光受光素子を試作し、InGaN系半導体薄膜の物性との関連を明らかにすることにある。本年度の実施計画項目毎の概要を以下にまとめる。 1.MSM構造素子の試作と評価 受光部500μm角および1000μm角、幅・間隔3μm〜15μmの櫛形電極をPt/AuまたはTi/Al金属で形成し、電流-電圧特性、光電流、分光感度、過渡応答特性を評価した。高速過渡応答波形の観測には本年度購入の「デジタルオシロスコープ」を用いた。GaN層2μm上にInGaN層20nmを形成したとき、Pt/Au電極でMSM(Metal-Semiconductor-Metal)構造特有の良好な電流-電圧特性が得られ、バイアス10Vの条件で、100pA以下の低暗電流と波長400nmで0.25A/Wの受光感度を得た。感度は3桁以上の光強度範囲にわたってほぼ一定であり、実用的に有用である。また、幅100psのパルス光によって半値全幅3nsの応答を確認できた。しかし、超短パルスに対する感度は直流光に比べ大幅に減少することが判明した。更に、透明なサファイア基板側から光照射することにより、紫外光を除き青色光を選択的に検出できることを実証した。 2.薄膜結晶の物性との関連 上記の素子特性は表面InGaN層の厚さに大きく依存し、例えば、50nmではショットキー接触が悪化し、暗電流の増大が観測された。これは、InGaN層が厚くなると凹凸が大きく欠陥の多い結晶になることに対応していると考える。一方、C-V法によりn形GaN薄膜結晶を評価し、電子濃度が8×10^<15>cm^<-3>であること分かった。更に、DLTS法によるの物性を評価を試みたが、高い直列抵抗成分のために深い準位の観測には至らなかった。
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