高性能な光メモリシステムを実現するためには、光信号を低ノイズ化して増幅する必要がある。本年度は、「負帰還光増幅効果」という新規な現象を見出した。この研究成果は、米国の応用物理速報誌のApplied Physics Lettersに掲載された。本効果は半導体光増幅器(SOA)の出力光中から入力光信号以外の周囲波長をフィルタで選択し、その周囲光をSOAに帰還(フィードバック)するシンプルな構成である。この帰還光はSOAの相互利得変調によって、入力信号光に対して反転している、すなわち負帰還光信号となっていることが重要である。この負帰還光がSOAにフィードバックされると、相互利得変調によってSOAの利得(ゲイン)が変調される。したがって、入力信号によってSOAの利得が自動的に変調され、入力信号の強度が弱い場合(ノイズに相当する)は利得が小さいため増幅度が弱められる効果が得られる。すなわち、ノイズ低減効果が得られる。 エレクトロニクスのアナログ電子回路においては負帰還増幅は重要な技術であり、ほぼ100%活用されている。その理由は、負帰還増幅器を用いることによって「非線形歪の低減」や「利得の安定」などの有益な効果が得られるからである。本負帰還光増幅効果においても同様に「非線形歪の低減」や「利得の安定」などの効果が得られている。したがって、本年度の研究成果において「光版の負帰還増幅器」の原理を示したことは、極めて重要な成果であると言える。今後は本負帰還増幅器を光メモリシステムに活用して、高性能なシステムを構築する予定である。
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