本研究の目的は、ナノメートルサィズの金属微粒子からなる島状金属薄膜を光記録層として用いる波長多重光記録媒質及び偏光多重光記録媒質について、どの程度の特性が期待できるのかを明らかにする事にある。本年度は、波長多重光記録について検討を行なうとともに、多重光記録用の周辺素子についても研究を行った。 先ず、短波長用の波長多重光記録媒質については、金属材料として銀を用いて波長500nm以下の波長帯を対象として検討を行った。金属として銀を用いた場合、粒子形状が偏平では波長500nm以下に共鳴吸収波長を持つ薄膜を得ることは不可能なので、基板面に垂直な方向に回転軸を持つ偏長な回転楕円体粒子からなる島状銀薄膜を用いた。薄膜1層当たりの最適な反射率や吸収率を10〜20%程度として検討を行った結果、銀微粒子のアスペクト比を0.1から0.8の範囲で制御することにより、波長350nmから450nmで、2〜3波長程度の波長多重化が可能であることが分かった。 次に、偏光多重光記録媒質について、通常の真空蒸着装置を用いて、基板を蒸着源に対して70°程度に傾けて蒸着する斜め蒸着法金属粒子により試作を行なった。偏光特性を持つ薄膜は得られたが、共鳴吸収特性はブロードであり、偏光多重光記録の原理確認実験には至らなかったので、現在試作方法の改良について検討中である。 また、波長多重・偏光多重光記録媒質用光ピックアップの構成要素である偏光子や波長合分波器については、昨年度に引き続いて主としてトレランスについて理論的な検討を行った。
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