研究概要 |
量子化あるいはベクトル量子化とは,多次元空間に分布するデータ点を空間に配置した量子点により代表する操作であり,空間の多次元性を有効に利用可能な信号処理基礎技術である.本テーマの主要な目的は確率密度に従うデータに対して,期待量子化歪みを最適化する問題を,所与の大量子点数のもとで考察し,筆者らが提案している二段階量子化器について新しい幾何学的な解析を行うことである.一般に,情報源符号化問題は,歪みを許容する場合と許容しない場合に分類できる.研究テーマは後者の研究に属するが,何れも多次元空間の性質を生かした符号化・信号処理の問題である.量子化問題については空間における歪みを一般化することが,一つの方向である.その意味において,本年度はノルムを1pに基づく漸近的量子化理論について研究を進展させた.さらに量子化の基本問題である多次元情報源における量子化係数の評価に関連して,多次元球の球公式が必要とされるがその初等的証明を見出した.さらに,歪みを許容しないユニバーサル情報源符号化に関連し,記号分解法,Zero冗長度推定量に関する冗長度性能の解析を行った.また,無歪みユニバーサル符号長に相当する確率的複雑性の情報幾何学的性質である統計的曲率に関してNECの竹内らと共同研究を行った.以上に関して情報理論関係の,国内シンポジウム,査読国際会議,査読論文誌などに発表を行った.
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