研究概要 |
OFDM伝送方式は,広帯域化・耐無線伝搬特性において優れた特性を有することから,将来の無線通信・放送技術を統合化する技術としても有力視されている.本研究では,平成16年度から2年間にわたり,このOFDM伝送方式を導入したMIMO(Multi-Input/Multi-Output)無線通信における高機能・高性能アンテナシステム(アダプティブアレー又はスマートアンテナ)について研究を行った.以下に具体的な成果を示す. ・携帯端末用アダプティブアレーとして2素子システムについて検討をした.この場合,素子間相互結合が一層強くなり,アダプティブアレーの特性に大きな影響を及ぼす.本研究ではMMSE(Minimum Mean Square Error)規範を用いて解析を行い,素子間結合が指向性ダイバーシチ効果を生み出し,特性が改善される場合があることを明らかにした. ・基地局用アダプティブアレーとしては,受信波の逐次方向推定を行い,受信と送信に最適な指向性を合成する手法について検討し,十分良好な性能が得られることが示された.また,OFDM用ガード区間MMSEアダプティブアレーの最適化アルゴリズムの初期値について検討し,有効な初期値設定法を提案した. ・到来波の周期定常性を利用して,所望の到来波の到来方向を選択的に推定できるNS(Noise Subspace)Cyclic ESPRITを提案し,さらに,干渉波残留成分を低減し所望波に対する到来方向推定性能を向上させることに成功した. ・MIMOのブランチに直交偏波を取り入れ,信号間干渉を抑制する方式について検討した.伝搬路の交差偏波振幅比が高い場合において十分な干渉除去効果が得られた. 以上,MIMO構成のOFDM無線通信に有用である幾つかの要素技術について検討を行い,それぞれ重要な知見が得られた.
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