研究概要 |
一般化直交変調方式は多次元空間の回転を用いて変調方式を定義するもので,回転平面と回転角の系列からなる変調パラメータを変更することにより,通信路妨害に対して最適化を行うことが可能な変調方式である.本年度は,前年度に引き続き,一般化直交変調のパラメータの自由度を用いた最適化,ならびに,一般化直交変調方式の識別方式について研究を行った. まず,前年度に提案した周波数選択性フェージング存在下においてもマルチユーザ干渉の影響を受けない一般化直交変調方式に対して,各ユーザの通信路の特性が異なる場合においてもユーザごとに変調方式を最適化する方式を新たに提案した.4ユーザが独立に異なった2シンボルの符号間干渉を受ける通信路環境において,提案手法は前年度に提案した方法と比較して0.21dBの利得があることを明らかにした. 次に,受信機において一般化直交変調方式の変調パラメータを推定することを目的として,変調方式識別法の開発を行った.前年度に開発した受信波の振幅と位相の結合モーメントを用いた識別法に,前処理として,受信した振幅と位相に線形変換を加える方式を開発し,その変調方式識別誤り率を解析的に求めた.2相位相変調,直交位相変調,直交振幅変調の識別に提案手法を適用した結果,著しい識別誤り率の改善が得られた.提案手法は受信機において周波数オフセットが存在する場合でも,その位相誤差がπ/8程度であればほとんど特性が劣化しない.また,干渉波が存在する場合においても,信号対干渉波電力比が20dB程度では干渉波がない場合と同等の識別誤り率が得られる.信号対雑音電力比が小さい5dBの場合においても,従来の線形変換を用いない場合に対して大きな改善が得られた. さらに,一般化直交変調の変調パラメータを,直接的に推定する方式の開発を行った,まず,受信信号点の標本の集合をクラスタに分割し,分割したクラスタをパラメータ推定に必要な信号点数のクラスタに回転を用いて集約する,この様にして得られた標本点の集合からなるクラスタの重心を用いて回転平面と回転角を求める.数値計算例として次元数3,4,6の一般化直交変調の変調パラメータを推定してそのビット誤り率を求めた.提案手法では,いずれの次元数においても,信号対雑音電力比8〜10dBでは標本数500〜1000で十分小さいビット誤り率を達成できた.これにより,直交周波数多重と直交位相変調などの識別が可能であることを明らかにした,
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