| 研究概要 |
一般化直交変調方式は多次元空間の回転を用いて変調方式を定義するもので,回転平面と回転角の系列が変調パラメータとなる.本研究では,通信路環境に適応して局所的に最適となる多次元直交多重システムを一般化直交変調を用いて開発した.本研究で得られた成果を以下に示す.
(1)多元接続システムにおいては,フェージングがユーザの信号間の直交性を崩すため多元接続干渉が発生して著しい特性劣化を引き起こす.フェージング存在下においても多元接続干渉の影響を受けない多元接続方式の条件を,一般化直交変調方式のパラメータの条件として明らかにした.この条件下で多元接続干渉が発生せず,かつ,フェージング以外の妨害要因に対しても,残された自由度により変調パラメータの最適化が可能であることを明らかにした.また,通信路環境がユーザごとに異なるような場合においても,ユーザごとに変調パラメータの最適化が可能であることを示した.
(2)変調方式識別方式について,受信信号の振幅と位相の結合モーメントを用いる方式を新たに提案した.結合モーメントを初等関数の級数として導出し,これを用いて解析的に識別誤り率を表した.識別誤り率の数値計算結果より,本方式が2相位相変調,直交位相変調ならびに直交振幅変調の識別で優れた識別誤り率を呈することを示した.また,結合モーメントを求める前処理として,位相シフトや線形変換を加える方式を開発し,その識別誤り率の改善効果を明らかにした.
(3)一般化直交変調の変調パラメータを,直接的に推定する方式の開発を行った.まず,受信信号点の標本の集合をクラスタに分割し,分割したクラスタをパラメータ推定に必要な信号点数のクラスタに回転を用いて集約する.この様にして得られた標本点の集合からなるクラスタの重心を用いて回転平面と回転角を求める.一般化直交変調の変調パラメータをランダムに発生させて送信し,受信機で推定した変調パラメータを用いて復調を行う計算機シミュレーションを行った.その結果,十分小さいビット誤り率を達成することができ,これにより,直交周波数多重と直交位相変調などの識別が可能であることを明らかにした.
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