研究概要 |
人間-エージェント社会の枠組みモデルを,運転者の社会である道路交通システム(特にタクシーの配車システム)と商品の売り手・買い手からなる売買システムを例題として構築し,その中で,エージェントのサポートを受けながら行動する人間の行動方針のモデルについて検討した.これらの例題は,タクシー自動配車システムやITS(Intelligent Transport Systems),インターネット取引などが進展・普及することにより,ネットワーク化されたエージェントの存在が大きな影響を持つことが予想され,本研究の対象としてふさわしいシステムである. 例題システムは,人間(運転者など)とエージェント(タクシー配車システムなど)とからなっており,人間は,自分が得た情報とエージェントから得た情報や評価を利用し,自分の行動決定規範に基づいて行動を行う.本研究では,まず,これらの働きをモデル化し,次に,エージェントから提供される情報と人間の行動決定規範の変化による影響をシミュレーションによって検討した.この結果,個人や社会の利益(タクシー売り上げや客の待ち時間,商品売り上げや買い手の満足度など)が大きく影響を受けることが確認された.これを踏まえ,エージェントから人間に効率的に情報を伝えられるように情報を選択し,かつ,人間の行動についての他者による評価をエージェントを介して人間に伝え,これらに基づいて適切な行動方針を人間が強化学習によって獲得するモデルを考案した.シミュレーションから,これによって社会や個人の利益増大が可能であることを確認した.特に,他者による評価をエージェントを介して人間に伝えることが大きな効果を持つことが明らかとなった.これは,エージェント仮想社会を適切に設計して利用することにより人間社会の課題を抑制しようという本研究のねらいが妥当であることを示唆している.
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