人間が机の前に座って机上で作業をする上肢運動に関する数学モデルを、モーションキャプチャによる身体部位の計測データより統計的に構築した。以下の3つの場合に分けてモデルを構築した。 1)机上に手先を置く姿勢に関する手先位置、肘、肩の関節角度との関係を表すモデル 2)反復運動における手先位置を表す動的モデル 3)反復運動における手先位置、肘、肩の関節角度の時系列モデル 1)の姿勢に関するモデルでは、手先位置と関節角度の関係を線形モデルで表し、そのモデルが手先位置に依存することから、同一モデルで表現できる手先位置領域を作業領域より抽出し、2種類のモデルを導出した。2種類のモデルに関して支配的な手先領域をファジィクラスタリングにより特定し、手先位置のこれらの領域への帰属度に基づき2種類のモデルを合成する方式により姿勢に関するファジィモデルを構築した。帰属度は実験データよりニューラルネットワークにより推定するアルゴリズムを開発した。 2)の反復動作における手先位置の動的モデルにおいては、手先位置を成長曲線モデルにフィッティングさせる推定法を提案し、速度パターンを推定した。それにより、移動目的の有無、移動後に要求される動作、把持すべき物体の大きさ、重さ、形状、障害物の位置や形状による手先の動きの変化を明らかにすることが可能となった。また、繰り返しによる「慣れ」に至る速度パターンの変化の過程を表すことができた。 3)の手先位置、肘、肩の関節角度の時系列モデルについては、多変量自己回帰(AR)モデルによる同定を行い各関節角度間の寄与率を推定することにより、反復運動に置ける肩、肘、手先の動きの依存関係を表すことが可能となった。
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