本研究プロジェクトでは、マウスの頭部を測定する電子スピン共鳴分光装置の開発を行ってきた。当初設定した目的に関して、以下のような到達度であった。 (1)電子スピン共鳴スペクトラムの信号対雑音比を向上する。 4〜6週齢程度のマウスの頭部を測定可能な共振器を開発した。血中に存在するラジカルを頭部においてイメージングすることに成功した。腹腔内に投与した数十ミリモル/リットルの造影剤(Oxo-63)0.1mlが、血流で頭部に運ばれた画像を検出できるようになった。 (2)直接フーリエ変換再構成法による二次元電子スピン共鳴画像化システムの開発 系統的に画像再構成に用いるフィルタの遮断周波数を決定するための評価関数を提案し、計算コードを開発した。 (3)電子スピン共鳴分光装置の安定性改善 マウスを用いた実験おいて、十分にイメージングが行える程度の安定性を実現した。 (4)動物実験による実証試験 マウス頭部の電子スピン共鳴イメージングを行い、開発した技術の有効性を検討した。ハードウエアの面では、マイクロ波共振器に改良の余地があり、画像再構成においては、解像度の向上が重要な課題であることが分かった。 当初の研究目的、「脳科学研究に用いる実験小動物(マウス)の頭部を高感度かつ安定に測定できる電子スピン共鳴分光装置を実現し、生命科学研究に用いる磁気共鳴スペクトロスコピーに関する基礎科学を開拓する」はほぼ達成された。今後も、電子スピン共鳴分光装置並びにイメージング法の開発を進め、生命科学に貢献できる技術を開拓していきたい。
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